レイク×シリウス前提 / 好感度2〜3 / レイク視点

「――だよなぁ。戦さえ終わればよ、精霊共は用済みになるし、召還士だって――」

――召還士、だって?


***


通り掛かったのは偶然だった。
普段良く過ごしていた場所に暇そうな連中が集っていたから、他の人気の無い場所を求めて歩いていた時のこと。
揃いも揃って黒い頭、見慣れた服装のそいつらは、この国・アダーラの兵士だとすぐに分かった。
建物の影、人目の行き届かない場所で寄り合い、実のない雑談に興じている。

(……サボリかよ)

緊張感の欠如した横顔をちらりと流し見、舌を打った。これだからヒトは。
あの様子では巡回の途中というわけでもないのだろう。だとしても一箇所に留まるなど考えられないことだが、一人二人ならともかく、あれだけの人数がいて誰も仕事に戻ろうとしないとは、語るに足らぬとはこのことだ。――まぁ、契約主である召還士をあからさまに避け続けている自分も、ある意味奴らと同類なのだろうが。

「……だろ〜! ハハハ!」
「……」

一際大きく響いた笑い声。神経に障るそれに眉を寄せ、踵を返す。
幸い奴らの目からは柱に隠れて自分の姿は見えないはずだ。あのだらけきった風情からして、このまま通り過ぎても見咎められるようなことは無いだろうが、万が一顔を合わせる羽目になっても面倒臭い。さっさと別の場所に行ってしまおう。
尚も無駄話を続ける兵士達に背を向け、その場を立ち去ろうと足を踏み出す――その単純な動きを妨げたのは、一人の兵士が何気ない調子で言い放った一言だった。
反射的に見開いた目で、黒い頭の群れを注視する。

(召還士、だって?)

その先は良く聞こえなかった。が、良い意味でないことはすぐに分かった。
召還士は――あいつは、兵士を含めた城の連中に嫌われている。化け物だとか言われているのも聞いた。同じヒト同士で馬鹿じゃないのか、とは思っていたが……

「俺、聞いたことあるぜ。化け物の処分の仕方」

笑い混じりに吐き出された言葉に息を飲む。
咄嗟に柱の影に隠れ直し、耳を澄ませてから、自らの反応に戸惑った。
ヒトの事なんて放っておけばいい。あいつがどうなろうが、自分には何も関係がないことだ。せいぜい精霊界に還るくらいで――

(――いや、……それは)

知らず彷徨いかけていた腕を胸元に引き寄せて、じわじわと滲み出す焦燥を自覚する。
契約は解除して欲しい。――けど、それとこれとは。

「――ええ!? 本当かよ。まぁ、化け物だしな……」
「下手に手を抜いたら、こっちが危ないだろ。妙な術を使うって聞くし、この間のアレだって……」

自問自答の間にも、兵士達の話は続く。
身振り手振りを交えて語られた「処分の仕方」は、戦に参加することなく、日々安穏と過ごしている兵士の口から零れるには余りにも不釣合いな内容だった。
何処までが本当なのかは分からない。大半が作り話なのかもしれない。
「処分できる」というその一言だって、もしかしたら間違いなのかもしれないが――

(……シリウス、)

通り掛かった時と全く変わらぬ調子で談笑する兵士達を横目に、自分が脳裏に浮かべたものは、ヒトに対する失望でも、身を切るような怒りでもなく、こちらを見て困ったように微笑む白髪の立ち姿、ただ一つきりだった。


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